香月泰男「シベリアシリーズ」

義姉の今後について話し合いのため横須賀に帰りました。その帰り道、葉山一色にある県立美術館 葉山に立ち寄り、「生誕110年・香月泰男展」を観ました。

香月泰男を知ったのはいつなのか、思い出せません。書籍(立花隆さん)か?丸木夫妻とのTV番組だったかはっきりしません。ただ、彼の連作「シベリアシリーズ」に衝撃を受け、美術館のある山口県長門市三隅まで訪ねたことがあります。しかし、それらはすべて山口県立美術館の所蔵になっていて、実作を観ることはかなわず、今回の巡回展が実作を観た最初でした。

1945年の敗戦から1947年5月の帰郷まで、捕虜としてシベリアに抑留されていた画家が1959年から描き出した40点を超える作品群は、画家個人の記憶の表現だけでなく、生きること死ぬこと、戦争の悲劇、を、炭を混ぜた油絵具の圧倒的な「黒」を使って観るものに投げかけてきます。

1945という作品の作者自身の注釈には

「奉天から北上する列車の窓から中国人(ママ)に恨みをかった日本人の生皮をはがされた屍体を見た。赤い屍体だった。

その後広島の被爆者の黒く焼け焦げた黒い屍体の写真を見た。

戦争の悲劇は無この被害者による受難よりも、加害者にならなかったものに、より大きいものがある。

戦争の本質への深い洞察も真の反戦運動も、黒い屍体からでなく赤い屍体から生まれなければならない。

再び赤い屍体を生みださないためにはどうすればよいか、それを考え続けるために『シベリアシリーズ』を描いてきた」

そして、出征を描いた「別れ」というシリーズ最終作品の注釈には

「実際には日の丸一本ふられたわけではない。

しかし、個人の意思が国家体制によって無視されるその門出には、目に見えぬ「黒い日の丸」が振られていた」

美術館の外は秋の雲が流れ、海は眩しく輝いています。

幾百の ひつじが跳ねる空 爽(さ)やか